霧箱の実験Ⅱ

 LS labではこの日,新メンバーを迎えて初めての実験を行いました.

 実験内容は霧箱を用いて普段は見ることのできない放射線を可視化しようというものです. 実はこの実験,以前一回失敗しています.今回はその時の反省をふまえてリベンジです!


 ここで,霧箱の原理を軽く説明しようと思います.

この実験では放射線そのものを見るのではなく放射線の一種であるα線の,分子をイオン化する力を利用して放射線の飛跡を見ています.この飛跡を発生させる原理が飛行機雲のでき方とよく似ています.まず,容器の上から下にかけてゆっくり温度を下げることによって無水アルコールを過飽和状態にします.例えば過飽和状態の水蒸気中にほこりや塵を加えるとそれを核として大きな水滴ができて雲になります.霧箱では過飽和状態のアルコール中に放射線が通過することでそれが核のような役割を果たし大きなアルコールの液滴ができます.正確には放射線に触れることによって電子をうばわれ,正に帯電した酸素イオンや窒素イオンが核となりそれにアルコールが引き付けられ大きな液滴ができます.この液滴が集まるとアルコールの霧となります.つまり,放射線が通った後にできる霧を

見ることで放射線の動きを観測することができるのです.

 

以下では霧箱に使用したものを紹介しています.

 

~実験に用いたもの~

・プラスチックコップ:この中で放射線を観測します.

・黒いテープ:放射線の飛跡を見やすくするためにプラスチックコップの

 底周辺にはりました.

・放射線源:人体に影響のないものを使用しました

・サランラップ:容器内の空気の乱れを防ぐフタです.

・スポンジ:アルコールをしみこませるために使います.細く切ってコッ      

 プの上部にぐるりとテープで張り付けます.

・無水アルコール:アルコールを過飽和状態にできるかどうかがこの実験  

 のカギとなります.

スポイト:アルコールをスポンジに浸み込ませるときにあると便利で

 す.

・ドライアイス:この上にプラスチックコップを置いて実験しました.

 コップ上部からコップ下部にかけて少しずつ温度が下がることによって 

 アルコールを過飽和状態にします.

*上の写真が作成した霧箱です.

 

 霧箱を作り終えてから5分おきに部屋の電気を消し,懐中電灯でコップの中を照らしながら観察をしていましたがなかなか変化はありません.また失敗か・・・そんな不穏な空気が流れ始めた頃(開始から1時間後ごろ)「あっ見える!」という先輩の声が!!

中を覗き込むと白い雲のようなもやもやの線が四方八方に飛び交っていました.これが放射線の飛跡です.動画でも確認することができるので見てみてください.

 今回の霧箱の実験は見事成功することができました.放射線源以外は簡単にスーパーや薬局で手に入るので皆さんも夏休みの自由研究にやってみてはいかがでしょうか?

 

以上で実験の報告を終わります.ご精読ありがとうございました.

 

LS lab2年 栗原沙織